液液平衡(Liquid-Liquid Equilibrium, LLE)とは、互いに混ざりにくい2種類以上の液体が混合されたとき、ある条件下で相分離し、それぞれの相に成分が分配された状態を指します。水と有機溶媒のように、極性が大きく異なる液体を混ぜた場合、溶質は両方の相に分配され、平衡濃度に達します。
このとき、各成分の分配割合は分配係数や熱力学的パラメータによって決定されます。液液平衡を理解することは、抽出や精製プロセスの設計に不可欠です。
液液平衡データは、溶媒抽出や分離精製を設計するうえで最も重要な基礎情報のひとつです。ある物質がどの相にどの程度移行するかを知ることで、分離効率や溶媒消費量を正確に予測できます。
受託蒸留や受託抽出の現場では、液液平衡を把握することで、目的成分を高収率で得るための条件設定や設備選定が可能となり、コスト削減や環境負荷低減につながります。
液液平衡を解析する際には、成分の濃度関係を可視化した相図(三角座標図)が用いられます。三成分系(溶質+溶媒A+溶媒B)の場合、各成分の組成比を三角形の頂点に割り当て、混合比ごとの平衡状態を示します。
相図には「タイライン」と呼ばれる直線が描かれ、ある初期組成から平衡に達したとき、それぞれの相に分配される組成点を結びます。これにより、どのような割合で成分が分配されるかを直感的に理解できます。
液液平衡を数値的に解析するには、活量係数モデルや状態方程式モデルが用いられます。代表的なものには以下があります。
これらのモデルをAspen Plus®やCHEMCADなどのプロセスシミュレーションソフトに組み込み、最適な操作条件を探索するのが一般的です。
液液平衡は温度や圧力の変化によって大きく変動します。例えば、温度上昇により相溶性が高まり、二相が一相に変化する「臨界溶解温度(CST)」が存在します。逆に温度低下により相分離が顕著になる場合もあります。
この特性を利用して、温度を操作することで相挙動を制御し、抽出効率を向上させる手法が実務で活用されています。
受託蒸留の前処理や代替手段として液液抽出が用いられるケースがあります。液液平衡データを利用することで、目的成分を高濃度で回収し、後段の蒸留負荷を低減できます。
たとえば、希薄な有価成分を含む水溶液から有機溶媒で抽出する際、液液平衡を基に最適な溶媒と抽出段数を設計することで、溶媒消費量を30%以上削減した事例もあります。
製薬業界では、医薬品原料の抽出・精製に液液平衡の知識が欠かせません。抗生物質やアルカロイドなど天然由来成分の抽出では、適切な溶媒選定と平衡条件が収率を大きく左右します。
食品分野では、香料成分や栄養素を高純度で回収する際に液液抽出が用いられます。液液平衡を利用して抽出条件を最適化することで、風味や機能性を損なわずに効率的な製造が可能となります。
廃水や廃液からの有害物質除去にも液液平衡が利用されます。たとえば、フェノールや重金属錯体を有機溶媒で抽出し、環境負荷を低減する手法です。
液液平衡を理解することで、廃液処理コストを抑えながら規制基準を満たすプロセスを構築できるため、持続可能な産業活動にも直結します。
蒸留には、薄膜蒸留、精密蒸留、水蒸気蒸留、分留など、さまざまな蒸留手法があります。蒸留の目的や対象の化学品や溶剤によって適切な蒸留方法が異なるため、自社工場に合ったパートナーを選ぶことが非常に大切。金属イオンや残留物を基準以下に蒸留精製できないと、製品の品質やコストにも関わるからです。
そこで、本メディアでは、蒸留の目的や特性に合わせて選べる受託蒸留会社を厳選し、3社比較を掲載しています。適切なパートナー選びの参考としてぜひご活用ください。
蒸留対象となる材料の性質や求める純度・精度によって、必要な蒸留技術は異なります。そのため、原料の特性に合った設備やノウハウを持つ会社を選ぶことが、製品の品質・精度・純度の向上につながります。
ここでは、蒸留の目的や素材に応じて選べる、おすすめの受託会社を3社ピックアップしました。
中国精油が得意な蒸留精製
新菱が得意な蒸留精製
八代が得意な蒸留精製