廃熱回収システム

廃熱回収システムとは？

廃熱回収システムの定義と基本概念

廃熱回収システムとは、工場や発電所、焼却炉などのプロセスで発生する未利用の熱エネルギー（廃熱）を回収し、再利用する仕組みを指します。これまで大気中や冷却水に放散されていたエネルギーを有効活用することで、省エネルギー化やコスト削減、CO₂排出量の削減につなげられます。

廃熱は低温域から高温域まで幅広く存在し、温水製造、蒸気再利用、発電、空調など多様な形で利用可能です。そのため、廃熱回収システムは産業プロセスの効率化に欠かせない技術のひとつです。

廃熱回収システムの役割と重要性

製造業や化学プロセスにおいては、蒸留・濃縮・反応工程などで大量の熱が投入されます。これらの工程で発生する廃熱を回収できれば、エネルギー原単位の削減だけでなく、設備負荷の低減や燃料コストの抑制につながります。

また、地球温暖化対策の観点からも廃熱回収は重要です。廃熱を再利用することでCO₂排出を削減し、持続可能な生産活動に貢献します。国や自治体も補助金や助成制度を設け、導入を推進しています。

廃熱回収システムの方法と技術

熱交換器を利用した廃熱回収

最も基本的な方法は、熱交換器を用いて廃熱を温水やプロセス流体に移す仕組みです。ボイラー給水を予熱する、暖房用温水をつくるといった形で広く利用されています。

プレート式熱交換器、シェル＆チューブ式熱交換器などが代表例で、比較的シンプルかつ導入しやすい手法です。

蒸気回収システム（MVRなど）

蒸留や濃縮工程で発生する蒸気を再利用する方法も一般的です。自己蒸気機械圧縮（MVR：Mechanical Vapor Recompression）では、廃蒸気を圧縮して再加熱源として利用します。

この技術を導入することで、ボイラー蒸気供給量を大幅に削減し、エネルギー効率を向上させることが可能です。

排ガス廃熱ボイラー

高温の排気ガスを利用する場合には、排熱ボイラー（熱回収ボイラー）が導入されます。セメント工場や製鉄所などで、排気ガスを利用して蒸気を発生させ、タービンで発電する「廃熱発電」が実用化されています。

廃棄物焼却施設でも、ごみ焼却熱を利用した発電（ごみ発電）が行われており、地域への電力供給に活用されています。

低温廃熱利用技術

従来は未利用だった低温廃熱も、ヒートポンプや有機ランキンサイクル（ORC）などの技術によって回収・利用が可能になっています。これにより、40〜80℃程度の低温熱源でも冷暖房や温水製造に活用できます。

廃熱回収システムの応用と実務での活用例

受託蒸留・化学プロセスでの応用

受託蒸留の現場では、蒸留塔や精留塔からの排熱を回収し、前段工程の加熱やボイラー給水の予熱に利用する事例があります。これにより、燃料消費を20〜40％削減した事例も報告されています。

さらに、廃熱回収とプロセスシミュレーションを組み合わせて、工場全体の熱バランスを最適化する取り組みも増えています。

製鉄・セメント産業での事例

高温排ガスを利用した廃熱発電は、製鉄所やセメント工場で広く導入されています。発電した電力は自家消費に回すだけでなく、余剰分を売電するケースもあり、収益化にもつながっています。

食品・製薬分野での事例

食品工場や製薬工場では、乾燥・殺菌・蒸留の工程で大量の熱が必要となります。廃熱回収システムを導入することで、蒸気コスト削減だけでなく、製品の安定品質維持や設備寿命の延長にも貢献します。

地域エネルギー供給での活用

廃熱は工場内部だけでなく、地域冷暖房システムにも利用されています。工場や発電所の廃熱を地域の熱供給に回すことで、エネルギーの地産地消を実現し、都市全体の省エネに寄与します。

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