分子蒸留

目次

分子蒸留は、分子の運動特性を利用し、通常の蒸留では難しい成分分離を可能にした技術です。ここでは、分子蒸留の特徴や原理、メリット・デメリットを解説。さらに、分子蒸留を扱う受託蒸留メーカーについてもご紹介します。

分子蒸留の特徴と用途

分子の運動特性に着目した蒸留技術

分子蒸留は、高真空下で蒸留を行い、揮発性が低く高沸点な物質の分離・精製を実現する蒸留技術です。従来の蒸留とは異なり、分子の平均自由行程を利用して成分を分離するため、高純度の物質を得ることが可能です。特に、医薬品、食品添加物、高性能オイルなどの製造で広く活用され、品質を維持しながら効率的な分離が求められる分野で重要な役割を果たします。

分子蒸留の原理

分子の平均自由行程を活用して蒸留

分子蒸留は、分子が他の分子と衝突するまでに進む距離(平均自由行程)よりも、蒸発と凝縮との間の距離を短くすることで、成分の品質を損なわず分離を可能にする技術です。そのため、分子蒸留には分子の平均自由行程を増加させる高真空環境が不可欠です。高真空下で分子蒸留を行うことで、従来の蒸留では難しい成分の分離も可能となります。

分子蒸留のメリットとデメリット

高純度な成分抽出を実現できる

分子蒸留は、高温を必要とせず、酸化や熱分解を防ぎながら高純度な成分を得られる点が大きな利点です。特に、医薬品や食品業界では、成分の品質を保持しつつ効率的に精製できるため、広く利用されています。また、熱に弱い物質や沸点差の小さい物質の蒸留にも適しています。

すべての成分を完璧に
抽出することは難しい

分子蒸留は、高精度な蒸留技術の一つではあるものの、100%完璧に成分を分離することができません。抽出の精度は、設備や制御システムの性能などによって変わってくるため、適切な条件で運用するためには専門知識と高度な制御技術が求められます。

素材特性に合った蒸留法なら
品質基準を満たせる

蒸留には、薄膜蒸留、精密蒸留、水蒸気蒸留、分留など、さまざまな蒸留手法があります。蒸留の目的や対象の化学品や溶剤によって適切な蒸留方法が異なるため、自社工場に合ったパートナーを選ぶことが非常に大切。金属イオンや残留物を基準以下に蒸留精製できないと、製品の品質やコストにも関わるからです。

そこで、本メディアでは、蒸留の目的や特性に合わせて選べる受託蒸留会社を厳選し、3社比較を掲載しています。適切なパートナー選びの参考としてぜひご活用ください。

分子蒸留導入時の注意点

技術者の確保や蒸留のための
トレーニングが必要

分子蒸留は設備が高価であり、真空環境を維持するための運用コストもかかるため、導入の際は初期投資や維持費を考慮することが重要です。特に、高真空環境を維持するための設備やポンプの性能が品質に直結するため、適切な機器の選定が求められます。また、運用には専門知識も必要で、技術者の確保やトレーニングの実施も導入時の重要な要素となります。

分子蒸留の受託蒸留を行っている
企業リスト

中国精油

中国精油公式HPキャプチャ
画像引用元:中国精油公式HP(https://www.chusei-oil.com/service/)

中国精油が対応できる
分子蒸留の特徴

中国精油では、薄膜蒸留装置を5台保有しており、高反応物質や腐食性物質など通常の蒸留では難しい蒸留ニーズに幅広く応じることができます。なお、薄膜蒸留と分子蒸留は同義であるため、薄膜蒸留装置で分子蒸留を行うことが可能です。

中国精油が対応できる
分子蒸留のスペック

中国精油の会社概要

会社名 中国精油株式会社
所在地 岡山県岡山市北区中山下2-1-77
電話番号 086-224-5771
公式URL https://www.chusei-oil.com/

八代

八代公式HPキャプチャ
画像引用元:八代公式HP(https://www.yashiro.co.jp/fd_md/)

八代が対応できる
分子蒸留の特徴

八代では中真空域に対応した薄膜蒸留装置を保有しているため、分子蒸留に対応することが可能です。ワイプタイプ(FD)の装置で分子量が400程度まで、遠心タイプ(MD)の装置で分子量が700程度まで、それぞれ蒸留することができます。

八代が対応できる
分子蒸留のスペック

※上記は流下膜式分子蒸留装置(ワイプタイプ)のスペックです

八代の会社概要

会社名 株式会社八代
所在地 大阪府大阪市平野区加美南5-5-17
電話番号 06-6531-9769
公式URL https://www.yashiro.co.jp/

東洋合成工業

東洋合成工業公式HPキャプチャ
画像引用元:東洋合成工業公式HP(https://www.toyogosei.co.jp/business/green-chemical/consigment.html)

東洋合成工業が対応できる
分子蒸留の特徴

東洋合成工業では、2003年に流下膜式薄膜蒸発機を導入しており、分子蒸留にも対応することができます。長年培った技術を活かし、高純度化や低水分化、低金属、低臭化など様々な品質の要望に応じることが可能です。

東洋合成工業が対応できる
分子蒸留のスペック

東洋合成工業の会社概要

会社名 東洋合成工業株式会社
所在地 東京都台東区浅草橋1-22-16ヒューリック浅草橋ビル8F
電話番号 03-5822-6170
公式URL https://www.toyogosei.co.jp/

編集チームまとめ

分子蒸留であれば熱に弱い物質にも
対応ができる

分子蒸留は、通常の蒸留では精製が難しい成分に対応ができる技術です。高純度な成分抽出に加え、熱に弱い物質や沸点差の小さい物質の抽出を行うことができます。特殊な設備や技術が必要であることから、受託できる会社が限られてくるため、事前に分子蒸留に対応可能かどうかの確認が必要でしょう。

【目的・特性別】
受託蒸留会社3選

蒸留対象となる材料の性質や求める純度・精度によって、必要な蒸留技術は異なります。そのため、原料の特性に合った設備やノウハウを持つ会社を選ぶことが、製品の品質・精度・純度の向上につながります
ここでは、蒸留の目的や素材に応じて選べる、おすすめの受託会社を3社ピックアップしました。

精密な温度管理
必要なら
中国精油
  • 熱分解しやすい機能性化学品も徹底した温度管理で蒸留精製できる薄膜蒸留設備が揃う
  • 半導体・電子材料分野の実績に加え、技術アドバイザーの知見で精製レベルの向上を図れる

中国精油が得意な蒸留精製

  • 熱に弱いフォトレジスト
  • 粘度のあるシリコーン
    など
使用済み溶剤を再生
するなら
新菱
  • 揮発性の高い溶剤や脱水が必要な有機溶剤を精密蒸留により再利用できる品質に精製可能
  • 使用済み溶剤を希望の純度に調整し、再利用することで廃棄コストと環境負荷の低減を両立

新菱が得意な蒸留精製

  • 揮発性の高い溶剤
  • 脱水が必要な有機溶剤
    など
脱酸・脱臭処理
必要なら
八代
  • 油脂の精製に特化。高真空環境での蒸留により、油脂の劣化を抑えながら精製できる
  • 脱臭・脱酸処理にも対応し、化粧品・食品向けの油脂の蒸留精製と品質向上にも貢献

八代が得意な蒸留精製

  • 酸化しやすい植物油脂
  • 脱臭処理が必要な油脂
    など
目的・特性別受託蒸留会社
3選