蒸気圧とは、液体とその蒸気(気体)が密閉された空間で平衡状態にあるときに、蒸気が及ぼす圧力のことを指します。温度が一定であれば、液体が蒸発し、気体が凝縮する速度がつり合う点で安定します。このときの蒸気の圧力が「飽和蒸気圧」、すなわち一般的に言う「蒸気圧」です。
物質ごとに蒸気圧の大きさは異なり、揮発性の高い液体ほど、同じ温度でも蒸気圧が高くなります。例えば、エタノールは水よりも分子間力が弱く、より早く気化するため、常温における蒸気圧が高い傾向にあります。
蒸気圧を温度に対してプロットしたものが「蒸気圧曲線」です。これは物質がどの温度でどれだけの蒸気圧を持つかを可視化したものであり、加熱や減圧などを行う蒸留プロセスでは重要な情報となります。
この曲線を用いることで、たとえば「ある物質が1気圧で沸騰する温度」=沸点を知ることができます。さらに、圧力を変化させれば沸点がどう変わるかも予測でき、真空蒸留や加圧蒸留などの設計判断にも活かされます。特に受託蒸留においては、対象物質ごとの蒸気圧曲線を把握することで、分離条件の調整や設備選定に活用できます。
蒸気圧は温度の上昇とともに増加し、その増加は直線的ではなく、指数関数的に変化します。これは、液体の温度が上がると分子運動が活発になり、より多くの分子が気体へと移行しやすくなるためです。
たとえば水の蒸気圧は、20℃で約2.3kPaですが、100℃になると101.3kPa(大気圧)に達し、沸騰が起こります。物質ごとの蒸気圧曲線はこのような性質を反映しており、温度制御による分離条件の調整に不可欠です。
また、常温での蒸気圧が高い液体は、取り扱いにおいても注意が必要です。密閉や換気が不十分な場合、作業環境中の濃度が上昇し、爆発や中毒のリスクが高まります。
蒸気圧曲線を定量的に扱うためには、クラウジウス‑クラペイロン式がよく使われます。これは、ある温度T₁における飽和蒸気圧P₁と、蒸発エンタルピーΔHが既知であれば、別の温度T₂における蒸気圧P₂を推算できる式です。
また、対数(logP)を取り、1/Tに対して直線的にプロットすることで、傾きや切片からΔHなどの熱力学パラメータを解析できます。より実務的な用途には、アントワン式(Antoine式)が広く利用されています。こちらは定数A,B,Cを使い、任意温度での蒸気圧を簡単に計算できる便利な式です。ただし、各式には適用温度範囲や単位系の違いがあるため、使う際には注意が必要です。
受託蒸留では、預かった混合液から目的成分を分離・精製するために、適切な温度・圧力条件を見極める必要があります。このとき、各成分の蒸気圧曲線を参照することで、分離に必要な沸点や圧力条件を判断できます。
たとえば、熱に弱い成分を扱う場合は、常圧ではなく減圧蒸留を採用し、蒸気圧曲線上でより低温での沸点を選びます。これにより、熱劣化を防ぎつつ効率的な分離が可能となります。
液体をポンプで移送する際、内部圧力が蒸気圧を下回ると気泡が発生し、キャビテーションと呼ばれる現象が起きます。これによりポンプの羽根車が損傷するおそれがあります。
したがって、配管系の設計時には、液温に対応した蒸気圧を基準に、十分な吸込圧を確保する必要があります。これも蒸気圧曲線を理解しておくことで、防ぐことが可能です。
食品や医薬品の製造では、熱に弱い成分の乾燥・濃縮に減圧状態が用いられます。蒸気圧曲線をもとに、どの温度・圧力条件で水分を気化させられるかを見極めることが重要です。
たとえば、フリーズドライでは、氷点下で水分が昇華(固体→気体)する条件をつくりだす必要があります。その際、水の蒸気圧曲線を利用して、昇華温度に対応する真空度を設定します。
蒸留には、薄膜蒸留、精密蒸留、水蒸気蒸留、分留など、さまざまな蒸留手法があります。蒸留の目的や対象の化学品や溶剤によって適切な蒸留方法が異なるため、自社工場に合ったパートナーを選ぶことが非常に大切。金属イオンや残留物を基準以下に蒸留精製できないと、製品の品質やコストにも関わるからです。
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中国精油が得意な蒸留精製
新菱が得意な蒸留精製
八代が得意な蒸留精製