半導体産業では、回路の微細化が進むにつれ、製造に使用する溶剤や薬品の純度が極めて重要になっています。わずかな不純物でも歩留まりや品質に影響を及ぼすため、高度な蒸留技術による精製が求められます。
本記事では、半導体製造における溶剤蒸留の役割や技術、受託蒸留サービスの選び方について解説します。
半導体業界向けに溶剤や薬品を供給する化学品メーカーは、純度の安定性、不純物の管理、コスト最適化といった課題に直面しています。半導体製造では、ナノレベルの不純物が製品の品質や歩留まりに影響を与えるため、高純度の溶剤を安定的に供給する必要があります。また、製造コストを抑えるためには、使用済み溶剤のリサイクルや効率的な精製プロセスの導入が求められます。
こうした課題を解決するために、溶剤蒸留技術が不可欠となります。高度な蒸留技術を活用することで、微量不純物や水分を取り除き、品質を確保しながらコストを削減できます。また、環境負荷を低減し、持続可能な生産体制の確立にも寄与します。
半導体製造では、フォトレジストや洗浄溶剤など、特定の用途に応じた高度な純度管理が求められます。各種蒸留技術を適切に選択することで、品質を確保しながらコストを抑えることが可能です。
蒸留技術 | 適用分野 | 実用事例 |
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減圧蒸留 | 熱に弱い薬品の精製 | 高温で劣化する感光性ポリマーの精製 |
高真空蒸留 | 超高純度溶剤の精製 | 半導体用フォトレジストの微量不純物除去 |
低温蒸留 | 熱変性リスクの低減 | 有機溶剤(アセトン・エタノール等)のリサイクル |
分留技術 | 成分分離の最適化 | 多成分溶液から特定成分を高純度で抽出 |
蒸気ストリッピング | 揮発性不純物の除去 | 有機系洗浄溶剤のリサイクルプロセス |
膜蒸留 | 低温精製が必要な溶剤 | 水分管理が重要な溶剤の超精密濾過 |
共沸蒸留 | 共沸混合物の分離 | 高純度IPA(イソプロパノール)の精製 |
2025年1月15日時点、Googleで「受託蒸留」と検索し、ヒットした64社の中から、受託蒸留を行っている会社のみ27社をピックアップしました。その中から、「半導体工場」で使われる減圧蒸留、高真空蒸留、分留の設備を保持している会社をすべて掲載しています。
会社名 | 中国精油株式会社 |
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所在地 | 岡山県岡山市北区中山下2-1-77 |
電話番号 | 086-224-5771 |
公式URL | https://www.chusei-oil.com/ |
会社名 | 株式会社ヨーユーラボ |
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所在地 | 群馬県太田市新田反町町108-1 |
電話番号 | 0276-20-8033(代表) |
公式URL | https://www.yoyulabo.co.jp/ |
会社名 | ネオケミカル株式会社 |
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所在地 | 大阪府大阪市中央区平野町3-4-2 NCビル |
電話番号 | 06-6232-0341(代表) |
公式URL | https://www.neo-chem.com/ |
会社名 | 株式会社三星化学研究所 |
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所在地 | 京都府京都市北区上賀茂北ノ原町14(本社工場) |
電話番号 | 075-781-1177(代表) |
公式URL | https://www.eonet.ne.jp/~kyoto-mitsuboshi/index.html |
会社名 | ジャパンケミカルリサーチ株式会社 |
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所在地 | 広島県東広島市河内町入野1291-47 |
電話番号 | 082-437-1105(代表) |
公式URL | https://www.j-cr.co.jp/ |
会社名 | 株式会社八代 |
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所在地 | 大阪府大阪市平野区加美南5-5-17 |
電話番号 | 06-6531-9769 |
公式URL | https://www.yashiro.co.jp/ |
会社名 | 交洋ファインケミカル株式会社 |
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所在地 | 京都府京都市南区吉祥院石原上川原町37 |
電話番号 | 075-681-0526 |
公式URL | https://www.koyo-fc.co.jp/ |
受託蒸留を活用するか、自社設備で処理するかは、コスト・設備投資・品質管理の観点から判断する必要があります。
項目 | 内製(自社処理) | 受託蒸留 |
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設備投資 | 高額(専用設備が必要) | 不要(外部サービスを利用) |
運用コスト | 維持管理コストが発生 | 使用量に応じたコスト |
技術・ノウハウ | 社内で技術者が必要 | 高度な技術を外部活用可能 |
品質保証 | 自社基準で管理 | ISO・GMPなどの規格に準拠 |
柔軟性 | 設備の制約あり | 多様な溶剤に対応可能 |
受託蒸留サービスを利用する際には、対応する溶剤の種類、精製の精度、品質管理体制、納期、コストなど、複数の要素を慎重に検討する必要があります。半導体業界では、ナノレベルの微量不純物が製品品質に影響を与えるため、受託先の設備や管理体制が不十分だと、最終製品の歩留まりに悪影響を及ぼしかねません。
また、自社のプロセスに適した蒸留技術を持つ企業を選定しなければ、期待する純度レベルを達成できない可能性があり、結果として再精製が必要になったり、歩留まりの低下を招いたりすることがあります。そのため、事前に設備や技術の適性を確認し、自社の要件を満たす受託蒸留会社を選ぶことが重要です。
半導体業界では、使用する溶剤の純度が製品の品質を大きく左右します。蒸留技術を選定し、適切な受託蒸留サービスを活用することで、不純物の混入を防ぎながらコスト削減や環境負荷低減を実現できます。
当メディアでは、温度管理や溶剤の再生、脱酸・脱臭処理など蒸留精製の目的や蒸留したい材料の特性に合わせて選べる受託蒸留会社3社を紹介しています。各社の強みや対応分野をチェックし、自社の要件に合った蒸留のパートナー選びの参考にしてください。
蒸留対象となる材料の性質や求める純度・精度によって、必要な蒸留技術は異なります。そのため、原料の特性に合った設備やノウハウを持つ会社を選ぶことが、製品の品質・精度・純度の向上につながります。
ここでは、蒸留の目的や素材に応じて選べる、おすすめの受託会社を3社ピックアップしました。
中国精油が得意な蒸留精製
新菱が得意な蒸留精製
八代が得意な蒸留精製