塔内動圧損失は、蒸留塔・吸収塔でガスがトレイや充填物を通過する際の運動に起因して生じる圧力低下です。総圧損は主に乾き圧損と液頭で評価し、ガス/液負荷・流体物性・内部構造に依存します。
堰高さや開口率、パッキン選定に加え、温度・圧力・還流比を最適化することで、圧縮動力を抑えつつ接触効率を維持し、分離性能と省エネを高められます。ただし過度な圧損低減はウィーピング等で効率低下を招くため、トレードオフの管理が重要です。
動圧損失が大きくなると、塔内の蒸気流が減速し、流体分布が乱れるため分離性能が低下します。例えば充填塔では、ガス流速が低い領域では圧力損失はガス速度の約1.8〜2.0乗に比例しますが、液量が増えて荷重点を超えると急激に増大し、最終的には液の持ち上がり(フラッディング)を引き起こします。また泡沫やウィーピングはトレイの液保持を妨げ、動圧損失の急増と温度勾配の乱れを招きます。適切な温度勾配制御を行わなければ装置全体の圧力・温度制御が不安定になり、製品組成が外れる危険があります。
塔内動圧損失が過大になると、分離プロセスの性能に悪影響を及ぼします。特に、流量を上げすぎて圧力損失が増大すると、塔内部で液体が持ち上げられてローディングやフラッディング(液があふれて塔が機能しなくなる現象)が発生し、正常な操作ができなくなります。実際に塔内の圧力損失が許容値を超える状態では、製品品質の維持が難しくなり、最悪の場合は運転継続が不可能になることもあります。そのため、圧力損失を適切な範囲に抑えることがプロセスの安定運転において重要です。
塔内の流体の流れ(上昇する気体と降下する液体)は、塔内動圧損失の発生メカニズムと密接に関係しています。一般的に、流速が高くなるほど摩擦抵抗が増すため圧力損失も大きくなります。本来、流体の静圧と動圧の和は一定(ベルヌーイの定理)ですが、塔内では摩擦により動圧の一部が失われ静圧が減少します。特に塔内を上昇するガスは、降り注ぐ液との界面でエネルギーを消費しながら進むため、圧力損失はガス流速の約2乗に比例して増加する傾向があります。
このように、塔内の複雑な流体力学(乱流の強さや相互作用)が動圧損失の大きさを左右します。
塔内の内部構造や配管の設計も動圧損失の大きさに影響を与えます。例えば、蒸留塔の棚段(トレイ)では蒸気が各段の液層を押し上げて小孔を通過する際に圧力降下が生じます。トレイのウィア高さ(堰の高さ)が高いほど液層が厚くなり、その分圧力損失も大きくなります。
一方、充填塔では充填材の種類やサイズによって内部の空隙率や表面積が異なり、圧力損失が変化します。一般に充填材の比表面積(パッキングファクター)が小さいほど圧力損失は抑えられます。また、塔への入口・出口の配管や塔内に設置されたミストエリミネータなども局部的な抵抗となり、動圧損失を増加させる要因になります。
塔内動圧損失は、設計段階で計算により予測・評価されます。一般に圧力損失ΔPは流体の密度や流速に依存し、流速の2乗に比例して増加します。塔内部構造による抵抗係数ζを考慮した経験式で算出するのが一般的です。充填塔では、Levaの経験式を用いてガス・液の流量や物性から圧力損失を求めます。
設計時はまず許容圧損を設定し、それを超えない構造を選びます。棚段塔では各トレイの圧力降下を積算して全体を評価し、充填材メーカーの計算ソフトや実験データも活用します。
塔内動圧損失を低減するには、塔内部品の設計最適化が重要です。従来の棚段塔を充填塔に変更すれば、圧力損失を大幅に減らせます。棚段塔でも、開口部を広げ液溜まりを減らした新型トレイを採用すれば、圧力損失を抑えつつ同等の蒸留性能を維持できます。充填塔では、充填材の種類やサイズの見直しが効果的です。大きめの充填材や規則充填材を用いると空隙が増え、抵抗が減ります。ただし分離効率とのバランスを考慮する必要があります。
塔内動圧損失を抑えつつ分離効率を高めるには、ガスや液の流量を必要以上に上げないよう運転条件を最適化することが重要です。流速や液ガス比を下げれば圧力損失は減りますが、過剰な流量は急激な損失増加を招きます。 必要最小限の流量で気液を効率よく接触させるよう、還流比や給液量を調整しましょう。さらに、液体分配器やガス分布板を適切に設計して気液を均一に分配すれば、偏流による無駄な圧力損失を防ぎ、分離効率を維持できます。
近年、塔内動圧損失を抑える新型トレイが開発されています。液溜まりを減らした低圧損タイプや、汚れが付きにくい設計が代表例です。蒸気流量に応じて開孔面積を自動調整する可変構造トレイも登場し、安定運転を実現します。 充填塔では、耐食性に優れたプラスチックやセラミック製の軽量充填材が普及。支持板不要の自己支持型構造や、液噴射でエジェクター効果を生む設計も現れています。これらの技術で、塔内動圧損失の低減と省エネ・高性能化が両立できます。
蒸留には、薄膜蒸留、精密蒸留、水蒸気蒸留、分留など、さまざまな蒸留手法があります。蒸留の目的や対象の化学品や溶剤によって適切な蒸留方法が異なるため、自社工場に合ったパートナーを選ぶことが非常に大切。金属イオンや残留物を基準以下に蒸留精製できないと、製品の品質やコストにも関わるからです。
そこで、本メディアでは、蒸留の目的や特性に合わせて選べる受託蒸留会社を厳選し、3社比較を掲載しています。適切なパートナー選びの参考としてぜひご活用ください。
蒸留対象となる材料の性質や求める純度・精度によって、必要な蒸留技術は異なります。そのため、原料の特性に合った設備やノウハウを持つ会社を選ぶことが、製品の品質・精度・純度の向上につながります。
ここでは、蒸留の目的や素材に応じて選べる、おすすめの受託会社を3社ピックアップしました。
中国精油が得意な蒸留精製
新菱が得意な蒸留精製
八代が得意な蒸留精製