物質が「どれくらいの温度」で「どれくらいの時間」、熱に晒されたかのトータルの記録を「熱履歴」と呼びます。この熱履歴の概念を理解することで、予期せぬ品質低下の要因を特定しやすくなります。化学物質の中には熱に弱いものも多く存在しており、熱履歴が大きくなると、成分の変色や熱分解といった重大な品質低下に繋がることがあります。既存の蒸留方法で精製品の品質低下に悩まされている場合、この「熱履歴」が原因となっているケースが考えられます。
熱履歴の大きさは、主に「加熱温度」と「滞留時間(物質が加熱装置内に留まる時間)」の掛け合わせによって決定されます。すなわち、たとえ加熱温度がそれほど高くなくても、滞留時間が長引けば熱履歴は増大していく仕組みです。逆に、加熱温度が高くても、滞留時間を短く保つことができれば熱履歴を抑えられることがあります。純度や色相の観点で要件を満たす精製を行うためには、この2つの要素を適切にコントロールすることが求められます。
沸点や融点が高い物質を蒸留する場合、気化させるために高い熱エネルギーが必要となります。それに伴い、加熱温度を高く設定し、かつ長時間の加熱を強いられる傾向にあります。結果として熱履歴が大きくなりやすく、目的成分の熱分解や、不純物の生成を引き起こすリスクが高まる点に注意が必要です。
蒸留釜に原料をまとめて投入し、長時間煮込むように加熱する「バッチ式蒸留」は、構造上、原料の滞留時間が長くなりやすい特徴を有しています。バッチ式蒸留装置を用いると熱履歴が大きくなりやすく、反応性化合物の精製が困難になる場合があります。そのため、熱に弱い物質や高沸点物質の精製においては、一般的なバッチ式蒸留では対応が困難なケースがあります。
熱履歴を抑えるための有効なアプローチの1つが、蒸留装置内の圧力を下げる(真空度を上げる)ことです。圧力を下げることで物質の沸点も下がるため、通常よりも低い温度で蒸留を行うことが可能になります。これにより、加熱温度という要素を抑え、熱分解のリスクを低減できます。
もう1つのアプローチが、「薄膜蒸発器(薄膜蒸留装置)」の活用です。これは、加熱面上に物質を薄い液膜状に広げて加熱する技術を指します。膜状にすることで効率よく熱が伝わり、蒸発を促進させることが可能です。薄膜蒸留装置を使用することで、伝熱面での滞留時間をわずか「数秒〜数分」程度にまで短縮できます。
熱に弱い物質や高沸点物質を精製する際、品質低下の主な原因として「熱履歴」が挙げられます。熱履歴を抑えるためには、加熱温度を下げる高真空下での蒸留や、滞留時間を短くする薄膜蒸留などのアプローチが有効です。自社の製品で変色や熱分解といった品質課題を抱えている場合は、これらの技術を持つ専門企業への相談を検討し、自社に最適な精製方法を見直してみてはいかがでしょうか。
蒸留対象となる材料の性質や求める純度・精度によって、必要な蒸留技術は異なります。そのため、原料の特性に合った設備やノウハウを持つ会社を選ぶことが、製品の品質・精度・純度の向上につながります。
ここでは、蒸留の目的や素材に応じて選べる、おすすめの受託会社を3社ピックアップしました。
中国精油が得意な蒸留精製
新菱が得意な蒸留精製
八代が得意な蒸留精製