蒸留塔の設計や運転に関わる中で、「目的の純度まで上がらない」「意図しない不純物が混ざってしまう」といったトラブルにお悩みの技術者の方も多いのではないでしょうか。蒸留プロセスにおける純度低下の要因は様々ですが、その代表的な原因の一つに「飛沫同伴(エントレインメント)」が挙げられます。本記事で飛沫同伴のメカニズムや悪影響、その対策について確認し、安定した高純度精製に向けた運用改善の手がかりとしてご活用ください。
飛沫同伴(エントレインメント)とは、棚段塔などの気液接触装置内において、下からの蒸気が液相を抜ける際に液滴を巻き上げ、上の段に持ち込んでしまう物理現象のことです。棚板上では蒸気と液体が接触することで物質移動と熱移動が行われますが、この際の激しい液の攪拌や気泡の破裂によって、気相中に微小な液滴が飛散することがあります。この飛沫同伴の現象により、本来下段に留まるべき液体が上段へ運ばれやすくなります。
飛沫同伴が発生する主な原因としては、塔内の蒸気速度(ガス流速)が速すぎることが挙げられます。蒸気の負荷が多すぎる場合、液滴を吹き飛ばす力が強まり、飛沫同伴が引き起こされやすくなります。また、液流量と蒸気流量のバランスの崩れも要因として考えられます。塔内の蒸気流量を一定とした場合でも、液流量の変化によって飛沫同伴量が変動することがあります。さらに、減圧下での運転時など、特定の条件下において飛沫同伴が増加する場合もあります。
飛沫同伴が及ぼす深刻な影響の一つは、分離効率(純度)の低下です。飛沫同伴によって巻き上げられた液滴には、蒸気に比べて高沸点(重沸点)成分が多く含まれる傾向があります。この重沸点成分に富んだ液滴が上の段(軽沸点側)に混入すると、上段の低沸点成分の液組成が低下し、結果として分離効率の悪化をもたらす要因となります。さらに、本来揮発しない不揮発性成分が飛沫同伴によって上段へ運ばれることで、塔内や留出物(製品)の品質低下を招くことがあります。
飛沫同伴は、さらに広範なトラブルを引き起こすリスクも孕んでいます。飛沫同伴(エントレインメント)が激しくなり、多量の液が飛沫として上段に持ち込まれると、トレイ(棚段)の処理能力を超えて液が溢れてしまう場合があります。これは「ジェットフラッディング(飛沫フラッディング)」と呼ばれ、最終的に蒸留塔内の気液接触が正常に行われなくなり、運転に支障をきたす可能性があります。
飛沫同伴を防ぐための基礎的な対策は、運転条件の見直しです。トレイ上での蒸気速度を下げるために、蒸気流量と液流量を適切にコントロールすることが求められます。飛沫同伴を完全に防ぐ条件で設計しようとすると塔径を大きくする必要があり、設備コストが増加する場合があります。そのため、許容できる範囲のエントレインメントを見極めつつ、還流比の調整などで運転バランスを探ることが一般的です。
設備設計上の対策として用いられるのが、塔頂部へのデミスター(ミストセパレータ)の設置です。塔頂部の空間にデミスターを設けることで、巻き上げられたミスト(液滴)を物理的なメッシュ等で捕集し、系外への流出を抑制しやすくなります。これにより、不純物の混入を防ぎ、有効成分の効果的な回収や環境負荷の軽減に寄与することが期待できます。
自社でのトラブル解決が難しい場合や、さらに高い精度の精製が求められる場合は、専門企業への委託も一つの選択肢となります。「中国精油」の受託蒸留サービスでは、これまでの設備設計と運転ノウハウにより、飛沫同伴をはじめとするトラブルの抑制を支援します。同社の水島工場には精密蒸留塔があり、目的物と不純物の沸点が接近していても分離の最適化が図りやすくなります。また、高真空下での薄膜蒸留装置も備えており、熱に弱い物質や高融点・高沸点の物質の蒸留にも対応可能な体制が整えられています。
高純度精製にお悩みの場合は、得意とする企業へ相談し、解決に向けた具体的な検討を進めてみてはいかがでしょうか。
蒸留対象となる材料の性質や求める純度・精度によって、必要な蒸留技術は異なります。そのため、原料の特性に合った設備やノウハウを持つ会社を選ぶことが、製品の品質・精度・純度の向上につながります。
ここでは、蒸留の目的や素材に応じて選べる、おすすめの受託会社を3社ピックアップしました。
中国精油が得意な蒸留精製
新菱が得意な蒸留精製
八代が得意な蒸留精製