低メタル化(低金属化)とは?

半導体や電子材料の技術資料を読んでいて「低メタル化」という言葉に出会い、意味がつかめずに検索してきた方も多いのではないでしょうか。低メタル化とは、半導体・電子材料などに含まれる金属不純物を極めて低いレベルまで低減することを指す、実務上の表現です。

なお、「低メタル化(低金属化)」という言葉そのものが、すべての材料や用途に共通する一律の規格値を示しているわけではありません。実際に求められる金属不純物の濃度は、材料の種類や用途、対象となる元素、製造工程、顧客仕様などによって異なります。

低メタル化を実現するには、金属不純物の混入経路を把握したうえで、材料に適した精製技術と、精製後の状態を確認する分析・品質管理体制を組み合わせることが重要です。本記事では、低メタル化の意味から、求められる背景、金属不純物の混入経路、蒸留を含む精製技術、分析方法、委託先選定のポイントまでを体系的に解説します。

低メタル化(低金属化)とは

低メタル化とは、製品や原料に含まれる金属不純物(metal impurities)を、用途に応じて極めて低いレベルまで低減することを指す、実務上の表現です。

半導体材料や電子部品向けの薬液などでは、金属不純物がデバイスの性能や信頼性、歩留まりに影響する可能性があるため、その濃度を厳しく管理する必要があります。SEMI C1でも、半導体製造に使用される液体化学品について、化学品ごとに異なる純度レベルや分析方法が設定されていることが示されています。

そのため、「低メタル化=何ppm以下」という一律の基準が存在するわけではありません。どの程度まで金属不純物を低減する必要があるかは、対象となる材料・元素・用途・工程などによって判断する必要があります。

混同されやすい言葉に「微量金属(trace metals)」があります。微量金属や金属不純物は、製品・材料中に微量に存在する金属元素を指し、その濃度を分析・管理する対象です。一方、「低メタル化」は、そうした金属不純物の濃度を低減していく取り組みや状態を表す言葉として使われます。

金属不純物がなぜ問題になるのか、その基礎から確認したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

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なぜ低メタル化(低金属化)が求められるのか

低メタル化が重視される重要な背景の一つが、半導体デバイスの高性能化・微細化に伴う汚染管理要求の厳格化です。金属不純物は、種類や濃度、混入する工程などによって、半導体デバイスの電気特性や信頼性、歩留まりに影響する可能性があります。

半導体の微細化が進むにつれて、プロセスに使用される薬液や材料についても、より厳格な不純物管理が求められています。実際に、半導体製造用の高純度化学品では、ppt(parts per trillion)レベルの不純物管理が求められる製品もあります。

半導体材料ではどの程度の金属不純物管理が必要なのか

金属不純物の要求レベルは、半導体のノード世代だけで一律に決まるものではありません。対象となる化学品・材料、元素、工程、顧客仕様などによって要求値は異なります。

たとえば、SEMI P32ではフォトレジスト中のトレースメタルについてppbレベルでの測定方法が示されており、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Ni、K、Naが対象金属として挙げられています。また、ユーザーとサプライヤーの合意によって、測定対象となる金属を追加・削減できるとされています。

一方、半導体製造に用いられる高純度硫酸では、金属や有機物などの不純物をpptレベルまで低減する技術が求められる製品もあります。このように、ppbとpptのどちらが必要になるかは、ノード世代だけではなく、対象となる材料や用途によって判断する必要があります。

管理対象となる代表的な金属元素

低メタル化の対象となる金属元素は、材料や用途によって異なります。

たとえば、フォトレジスト中のトレースメタル分析について定めたSEMI P32では、Al(アルミニウム)、Ca(カルシウム)、Cr(クロム)、Cu(銅)、Fe(鉄)、Mg(マグネシウム)、Mn(マンガン)、Ni(ニッケル)、K(カリウム)、Na(ナトリウム)が対象金属として挙げられています。

ただし、実際の管理対象はこれらに限定されるわけではありません。材料や顧客仕様によっては、追加の元素を測定対象に含める場合もあります。そのため、委託先を選定する際には、単に「金属分析に対応できるか」だけでなく、自社が管理したい元素を測定できるかを確認することが重要です。

低メタル化(低金属化)の基準単位(ppm/ppb/pptの違い)

低メタル化を語るうえで欠かせないのが、含有量を示す単位の理解です。用途によって求められる濃度レベルが大きく異なるため、まずは単位ごとの意味を押さえておきましょう。

単位 読み方・意味 換算 用途の例
ppm 100万分の1(parts per million) 1ppm=0.0001% 比較的高い濃度範囲の不純物管理
ppb 10億分の1(parts per billion) 1ppb=0.001ppm 半導体材料・薬液などの微量金属管理
ppt 1兆分の1(parts per trillion) 1ppt=0.001ppb 一部の先端半導体向け高純度材料・薬液など

ppm、ppb、pptは、それぞれ濃度を表す異なる単位です。ppmからppb、ppbからpptへ変わると、同じ数値で比較した場合の濃度はそれぞれ1,000分の1になります。

ただし、「pptまで対応できる=あらゆる材料でpptレベルの品質を保証できる」という意味ではありません。 分析装置の検出能力だけでなく、試料の前処理、マトリックス、試薬や容器からのブランク、分析方法なども結果に影響します。

低メタル化に対応する受託会社を検討する際は、単に「高純度」と表現されているだけでなく、どの元素を、どの濃度レベルまで、どの分析方法で評価できるのかを確認することが重要です。

低メタル化を阻む金属不純物の混入経路

低メタル化を実現するためには、そもそも金属不純物がどこから混入するのかを理解しておく必要があります。代表的な混入経路として、原料、設備、環境などが挙げられます。

原料由来

化学品の合成過程で使用する原料や触媒などに含まれる金属成分が、精製後も残留するケースがあります。

特に合成反応で金属触媒を使用する場合には、反応後の精製工程で金属成分を十分に低減できるかどうかが重要になります。原料そのものの純度管理も、最終製品の金属不純物濃度に影響する要素の一つです。

設備由来

製造・精製工程で使用する配管、容器、フィルター、蒸留装置などの接液部材から金属成分が溶出することも、代表的な混入経路の一つです。

ステンレスなどの金属材料は、使用する薬液の種類、温度、接触時間、表面状態などの条件によって、微量の金属成分が溶出する可能性があります。そのため、低メタル化を求める製造工程では、材質だけでなく、表面処理、洗浄、使用条件、溶出評価などを含めて設備を管理する必要があります。

環境・保管・充填工程由来

精製工程だけでなく、充填、保管、輸送などの工程で再汚染が発生する可能性にも注意が必要です。

また、環境中のパーティクルが製品に混入することもあります。ただし、パーティクルと金属不純物は同じ品質指標ではありません。パーティクルは粒子数や粒径などを管理する対象であり、金属元素の濃度はICP-MSなどを用いて別途評価する必要があります。

低メタル化を実現する精製技術

金属不純物を低減する方法は、対象となる材料や金属の存在形態によって異なります。蒸留はその選択肢の一つであり、すべての材料に対して同じ方法が適用できるわけではありません。

材料によっては、蒸留以外にも吸着、イオン交換、ろ過などの精製方法を組み合わせて金属不純物を低減する場合があります。したがって、低メタル化を検討する際には、対象物質の性質や金属不純物の存在形態に応じた精製方法を選択することが重要です。

高真空蒸留・分別蒸留による分離

蒸留では、成分ごとの揮発性の違いを利用して分離・精製を行います。金属不純物が非揮発性の形態で存在し、目的成分との間に十分な揮発性の差がある場合には、蒸留によって金属不純物を低減できる場合があります。

高真空下では、物質の沸点を低下させることができるため、常圧より低い温度で蒸留できる場合があります。これにより、熱による品質劣化を抑えながら精製できる可能性があります。

ただし、金属不純物がどのような化学形態で存在しているか、目的成分との揮発性にどの程度の差があるかなどによって、蒸留による除去効果は変わります。そのため、「金属不純物は蒸留すれば必ず除去できる」と考えるのではなく、対象物質ごとに精製条件を検討することが必要です。

装置の接液部材質と洗浄プロセス

低メタル化を追求する上では、蒸留条件だけでなく、装置からの金属成分の溶出や、洗浄不足による再汚染をいかに防ぐかも重要です。

接液部材には、用途に応じてステンレスやフッ素樹脂などが使用されます。たとえばSUS316LやPFA、PTFEなどが候補となる場合がありますが、材質だけで低メタル化が保証されるわけではありません。

実際には、材質の耐食性だけでなく、表面処理、洗浄方法、使用する薬液との適合性、金属成分の溶出量などを総合的に評価する必要があります。

また、精製前後の洗浄工程では、設備や対象物質に適合した高純度の洗浄液や超純水などを使用し、必要に応じてブランクや溶出状態を確認するなど、工程全体で汚染を管理することが重要です。

クリーン環境・専用充填システムによる再汚染防止

精製後の製品を充填・保管する工程でも、再汚染を防ぐための管理が必要です。精製工程で金属不純物を低減できても、その後の容器、配管、充填設備、保管環境などから再び不純物が混入すれば、最終製品の品質に影響する可能性があります。

そのため、必要に応じて専用の充填システムやクリーンな作業環境を使用し、精製から充填・保管・輸送までを含めて不純物の再混入を管理することが重要です。

実際に半導体向け高純度化学品では、生産から輸送までの工程で不純物の混入を抑え、微小不純物の分析によって品質を管理する取り組みが行われています。

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低メタル化を確認する分析・品質保証体制

どれほど精密な精製技術を持っていても、精製後の金属不純物濃度を適切に測定できなければ、低メタル化の達成状況を評価することはできません。そのため、精製技術と分析・品質管理体制を組み合わせることが重要です。

ICP-MSによる微量金属分析

低メタル化の評価に用いられる代表的な分析手法の一つが、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析法)です。

ICP-MSでは、試料をプラズマ中に導入して原子化・イオン化し、そのイオンを質量分析することで、微量元素を高感度に測定できます。半導体分野では、プロセス薬液や超純水などに含まれる微量金属の分析にICP-MSが用いられており、条件によってpptやsub-pptレベルの測定にも対応できます。

ただし、実際の検出限界や定量下限は、対象元素、試料マトリックス、前処理、装置構成、ブランクなどによって異なります。そのため、「ICP-MSだからすべての元素を一律にpptレベルで測定できる」と考えるのは適切ではありません。

精製前後の含有量をデータで評価する重要性

信頼できる受託精製会社を選ぶ際には、精製技術だけでなく、精製前後の金属不純物濃度を分析し、低減効果を定量的に評価できる体制があるかを確認することが重要です。

特にpptレベルなどの微量分析では、試薬や容器などからの汚染、分析装置のバックグラウンド、試料マトリックスによる影響なども考慮する必要があります。分析結果だけでなく、分析方法や検出限界、定量下限などを確認することで、より適切に品質を評価できます。

パーティクルなど周辺の品質管理体制

金属不純物の分析とは別に、パーティクルの管理も半導体材料の品質管理では重要です。

パーティクルカウンターは、液体中などに存在する粒子の数や粒径を測定するための装置です。一方、金属元素の濃度を測定するものではありません。そのため、金属不純物とパーティクルは、それぞれ適切な方法で管理する必要があります。

低メタル化を安定して維持するためには、金属不純物分析に加えて、粒子、設備、洗浄、充填、保管などの工程も含めて総合的に品質を管理することが重要です。

半導体・電子材料の研究開発担当者が低メタル化の委託先を選ぶ際のポイント

半導体メーカーの研究開発部門などで、シリコーン系電子材料、フォトレジスト、溶剤などの高純度化を検討している場合、委託先の選定では、まず対象となる材料に適した精製方法を提案できるかを確認することが重要です。

蒸留が適用できる液状材料であれば蒸留が有力な選択肢になりますが、すべての材料で蒸留が適しているわけではありません。対象物質の熱安定性、揮発性、金属不純物の存在形態などを踏まえ、適切な精製方法を検討できる会社を選ぶ必要があります。

次に重要なのが、自社が求める要求スペックに対応した分析体制を持っているかという点です。「高純度に対応可能」という表現だけでなく、実際にどの元素を、どの濃度レベルまで、どの分析方法で測定できるのかを具体的に確認しましょう。

また、シリコーン系材料やフォトレジストなど、熱安定性や組成管理が重要な材料については、いきなり量産を依頼するのではなく、試作・ラボスケールの段階から相談できる体制があるかも重要な判断基準です。

少量スケールで精製条件や分析方法を検討し、自社の品質要件を満たせるかを事前に確認することで、量産移行後のトラブルを抑えやすくなります。

業種別・素材別に受託蒸留会社の特徴を確認したい方は、以下のページもあわせてご覧ください。

半導体工場向けの受託蒸留について
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シリコーンの受託蒸留について
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編集チームまとめ

低メタル化とは、半導体・電子材料などに含まれる金属不純物を、用途に応じて極めて低いレベルまで低減することを指す実務上の表現です。具体的な要求濃度は、半導体のノード世代だけで一律に決まるものではなく、材料・薬液・対象元素・工程・顧客仕様などによって異なります。

一部の半導体向け高純度化学品では、pptレベルの不純物管理が求められる一方、フォトレジストなどではppbレベルのトレースメタル分析方法が規定されています。このように、求められるレベルは対象となる材料や用途によって異なるため、具体的な要求仕様を確認することが重要です。

低メタル化を実現するには、対象物質の性質に応じた精製技術に加えて、設備・接液部材の管理、洗浄、充填・保管時の再汚染防止、ICP-MSなどによる金属不純物分析を組み合わせて管理する必要があります。

自社が求める低メタル化のレベルに対応できる委託先を探している場合は、単に「高純度対応」と記載されているかだけで判断せず、実際の精製実績、対象元素、分析方法、測定可能な濃度レベル、試作対応の可否などを確認した上で、材料に適したパートナーを選ぶことをおすすめします。

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受託蒸留会社3選

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中国精油が得意な蒸留精製

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新菱が得意な蒸留精製

  • 揮発性の高い溶剤
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八代が得意な蒸留精製

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